固定資産税の仕組みを徹底解説:対象となる資産と税率一覧

土地・建物・償却資産に課される固定資産税の仕組みと課税対象を詳しく解説

固定資産税とは:基本的な仕組み

固定資産税は、毎年1月1日時点で固定資産(土地・家屋・償却資産)を所有している人に対して課される地方税です。市区町村が課税・徴収し、地域の公共サービスを支える重要な財源となっています。

基本的な仕組み

  • 課税主体:市区町村(東京23区は東京都)
  • 納税義務者:毎年1月1日時点の固定資産の所有者
  • 課税対象:土地、家屋、償却資産
  • 税額算定方法:固定資産評価額 × 課税標準率 × 税率
  • 納付時期:通常、年4回(4月、7月、12月、2月)に分けて納付

固定資産税は、総務省が定める「固定資産評価基準」に基づいて算定された評価額をもとに課税されます。評価額は3年ごとに見直される「評価替え」が行われます。

課税対象となる固定資産

固定資産税の課税対象は、大きく分けて「土地」「家屋」「償却資産」の3種類です。それぞれの資産について詳しく見ていきましょう。

資産の種類 課税対象 課税対象外の例
土地 宅地、田畑、山林、牧場など 道路、公園、河川など公共の用に供する土地
家屋 住宅、店舗、工場、倉庫など 仮設建物、10㎡未満の簡易な物置など
償却資産 事業用の機械設備、車両、工具など 自家用車、家庭用家具など

評価額の算定方法

  • 土地:「路線価方式」や「標準地比準方式」により算定。公示価格の7割程度が目安とされています。
  • 家屋:新築時は「再建築価格」から算出し、経年による価値の減少(経年減点補正)を考慮して評価額が決定されます。
  • 償却資産:取得価額をもとに、法定耐用年数に応じた減価償却を行って算定されます。

土地に関する固定資産税

土地の固定資産税については、その利用状況により課税標準が大きく異なります。特に住宅用地に対しては、大幅な特例措置が設けられています。

住宅用地の特例

区分 範囲 固定資産税の課税標準 都市計画税の課税標準
小規模住宅用地 住宅1戸あたり200㎡までの部分 評価額の1/6 評価額の1/3
一般住宅用地 小規模住宅用地以外の住宅用地 評価額の1/3 評価額の2/3

特例の適用例

例えば、280㎡の土地に一戸建て住宅が建っている場合、200㎡までの部分は小規模住宅用地(評価額の1/6が課税標準)、残りの80㎡は一般住宅用地(評価額の1/3が課税標準)として扱われます。

土地の評価方法

  1. 路線価方式:市街地など整然と区画された地域では、道路に面する土地(正面路線)の単位面積あたりの価格(路線価)をもとに評価します。
  2. 標準地比準方式:郊外や路線価のない地域では、評価対象の土地と類似する標準的な土地との比較により評価します。

土地評価時の補正要素

  • 地積(面積):土地の広さ
  • 形状:整形地か不整形地か
  • 奥行き:道路からの奥行きの長さ
  • 間口:道路に接する部分の長さ
  • 角地:複数の道路に接しているか
  • 高低差:土地に高低差があるか
  • 接面道路の状況:幅員、舗装状況など

家屋に関する固定資産税

家屋とは、土地に定着する建造物のうち、屋根および周壁を有し、独立して風雨をしのぐことができる構造のものを指します。住宅、店舗、工場、倉庫など、ほとんどの建物が課税対象となります。

家屋の評価方法

  1. 再建築価格の算定:評価時点における建築費(資材費、労務費など)に基づいて、同一の家屋を新築した場合の建築費を算出
  2. 経年減点補正:建築後の年数経過による価値の減少を考慮して補正
  3. 需給事情による補正:建物の需給事情による価格変動を考慮

家屋の固定資産税評価額は、通常、建築費の7割程度から始まり、経年による減価と3年ごとの評価替えにより徐々に低下していきます。

新築住宅の減額特例

対象住宅 減額期間 減額内容 適用条件
一般の住宅 新築後3年間 税額の1/2減額 床面積50㎡~280㎡
中高層耐火建築物
(マンションなど)
新築後5年間 税額の1/2減額 床面積50㎡~280㎡
認定長期優良住宅 新築後5年間 税額の1/2減額 床面積50㎡~280㎡

注意点:減額の対象となるのは、各住戸の床面積が120㎡までの部分のみです。それを超える部分は通常通り課税されます。

増改築の取り扱い

  • 増築部分は、新たな家屋として評価されます
  • 改築部分は、既存の家屋の一部として再評価されます
  • バリアフリー改修や省エネ改修を行った場合、一定の条件を満たせば税額の減額措置があります

償却資産に関する固定資産税

償却資産とは、事業のために用いられる土地・家屋以外の事業用資産で、減価償却するものを指します。個人事業主や法人が事業に使用する機械設備、工具、備品などが該当します。

償却資産の例

課税対象となる償却資産の例

  • 構築物(舗装路面、門、塀など)
  • 機械装置(生産設備、発電機など)
  • 工具・器具・備品(事務機器、医療機器など)
  • 船舶、航空機
  • 車両・運搬具(フォークリフトなど)

課税対象とならない資産の例

  • 自家用車(事業用登録していないもの)
  • 家庭用電化製品・家具
  • 取得価額が20万円未満の少額資産(一部)
  • ソフトウェア(無形固定資産)
  • 建物附属設備(家屋として評価)

償却資産の申告と納税

  1. 申告義務:毎年1月1日時点で所有する償却資産を、1月31日までに所在地の市区町村に申告する必要があります
  2. 評価額の算定:取得価額から法定耐用年数に応じた減価償却を行い、評価額を算定します
  3. 課税標準額の計算:評価額に特例がある場合は適用し、課税標準額を決定します

申告に関する注意点

償却資産の申告は所有者の義務です。申告を怠ると、追徴課税や過料が課される可能性があります。また、法人税や所得税の減価償却とは異なる評価方法が適用される場合がありますので注意が必要です。

中小企業に対する特例措置

一定規模以下の中小企業が新たに取得した償却資産については、課税標準の特例措置が適用される場合があります。具体的には:

  • 資本金1億円以下の法人等が新規取得した一定の設備について、課税標準が最大3年間1/2に軽減
  • 中小企業経営強化税制の適用を受けた資産について、課税標準が最大3年間ゼロに

固定資産税の税率一覧

固定資産税の税率は、地方税法により「標準税率」が定められていますが、市区町村によって若干の違いがあります。

標準税率

税金 標準税率 税率の制限 備考
固定資産税 1.4% 標準税率を超える場合は条例が必要 全国ほとんどの自治体で1.4%
都市計画税 標準税率なし 上限0.3% 市街化区域内の土地・家屋に対して課税(任意)

主要自治体の税率

自治体 固定資産税率 都市計画税率 合計税率
東京23区 1.4% 0.3% 1.7%
横浜市 1.4% 0.3% 1.7%
大阪市 1.4% 0.3% 1.7%
名古屋市 1.4% 0.3% 1.7%
札幌市 1.4% 0.3% 1.7%
仙台市 1.4% 0.3% 1.7%
広島市 1.4% 0.3% 1.7%
福岡市 1.4% 0.3% 1.7%

全国のほとんどの市区町村では標準税率(固定資産税1.4%、都市計画税0.3%)を採用していますが、一部の地域では独自に税率を設定している場合もあります。詳細は各自治体のホームページなどでご確認ください。

課税されない資産と減免制度

固定資産税には、法令により非課税とされる資産と、一定の条件を満たす場合に減免される制度があります。

非課税となる主な資産

公共・公用の資産

  • 国や地方公共団体が公用または公共用に供する資産
  • 道路、公園、河川、水路など
  • 公立学校、公立病院など

公益的な資産

  • 宗教法人が所有する境内地や境内建物
  • 学校法人が所有する学校用地や校舎
  • 社会福祉法人が所有する社会福祉施設
  • 医療法人が所有する病院用地や建物

個人資産の減免制度

  • 災害による減免:震災、風水害などにより著しく価値が下落した資産
  • 生活保護世帯:生活保護法の規定による保護を受ける世帯の住宅用地と家屋
  • 障害者減免:障害者が所有する住宅用地と家屋(自治体により異なる)
  • 高齢者減免:一定の条件を満たす高齢者の住宅用地と家屋(自治体により異なる)
  • 低所得者減免:収入が一定基準以下の方の住宅用地と家屋(自治体により異なる)

減免申請に関する注意点

減免を受けるためには、各自治体の定める期限内に申請が必要です。また、減免の対象や割合は自治体によって異なりますので、詳しくはお住まいの市区町村の税務課にお問い合わせください。

納税方法と注意点

固定資産税の納税方法と納付時の注意点について解説します。

納税通知書

固定資産税の納税義務者には、毎年4〜5月頃に市区町村から「納税通知書」が送付されます。この通知書には以下の情報が記載されています:

  • 課税対象となる資産の評価額と課税標準額
  • 税額と納期ごとの納付額
  • 各納期の納付期限
  • 納付方法や問い合わせ先

納付方法

一般的な納付方法

  • 金融機関窓口での納付
  • 口座振替
  • コンビニエンスストアでの納付
  • クレジットカード納付(一部自治体)
  • 電子マネー・スマホ決済(一部自治体)

納付のタイミング

  • 第1期:4月末頃
  • 第2期:7月末頃
  • 第3期:12月末頃
  • 第4期:2月末頃
  • ※自治体によって異なる場合があります

納税に関する注意点

滞納した場合のリスク

納期限を過ぎると、以下のような措置が取られる可能性があります:

  • 延滞金の発生:納期限の翌日から納付日までの日数に応じて加算されます
  • 催告書の送付:納期限後一定期間経過すると送付されます
  • 財産の差押え:滞納が続くと、預貯金、給与、不動産などが差し押さえられる場合があります

納付が困難な場合は、早めに市区町村の税務課に相談することをおすすめします。事情によっては、分割納付や徴収猶予などの措置が認められる場合があります。

よくある質問

固定資産税は、毎年1月1日時点の所有者に課税されます。例えば、2024年6月に不動産を購入した場合、2024年の固定資産税は前所有者が負担し、あなたは2025年分から固定資産税を支払うことになります。ただし、売買契約で日割り計算して精算する場合もあります。

固定資産税評価額は、以下の方法で確認できます:
1. 毎年4〜5月頃に送付される「固定資産税納税通知書」に記載されています
2. 市区町村の税務課窓口で「固定資産課税台帳」の閲覧や「評価証明書」の発行を申請する
3. 一部の自治体では、インターネットで確認できるサービスを提供しています

固定資産税評価額と市場価格(実勢価格)は異なります。土地の場合、固定資産税評価額は公示価格の約7割程度を目安に設定されています。建物の場合は、再建築価格をベースに経年減価を考慮して算定されるため、市場価格とは連動しない独自の評価方法となっています。

固定資産税の評価額に不服がある場合は、納税通知書を受け取った日から3ヶ月以内に「固定資産評価審査委員会」に審査の申出をすることができます。審査の申出は、資産の所在する市区町村の固定資産評価審査委員会に行います。具体的な手続きについては、各市区町村の税務課にお問い合わせください。

所有者が亡くなった場合、原則として相続人が固定資産税の納税義務を引き継ぎます。相続登記が完了していない場合でも、実質的な所有者として納税義務が発生します。相続人が複数いる場合は、法定相続分に応じて連帯して納税する義務があります。所有者が亡くなった際は、市区町村の税務課に「所有者変更届」などの提出が必要な場合がありますので、確認しましょう。

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は所得税・住民税の控除制度であり、固定資産税とは直接の関係はありません。ただし、住宅ローン控除の適用を受けるためには、床面積が50㎡以上であることなどの要件があり、この床面積は固定資産税の課税明細書などで確認できます。また、住宅ローン控除の適用を受ける住宅に対しては、固定資産税の軽減措置(新築住宅の減額特例など)も併せて受けられる場合があります。

まとめ

固定資産税は、不動産所有者にとって避けられない税金ですが、その仕組みと課税対象を理解することで、適切な対策や節税方法を検討することができます。

固定資産税の要点

  • 毎年1月1日時点の所有者に課税される地方税
  • 土地・家屋・償却資産が課税対象
  • 標準税率は1.4%(都市計画税は0.3%)
  • 住宅用地や新築住宅には税負担を軽減する特例あり
  • 課税評価額は3年ごとに見直し(評価替え)
  • 通常、年4回に分けて納付

固定資産税は市区町村の重要な財源となっており、地域の公共サービスを支える大切な税金です。納税に関する詳細や疑問点がある場合は、各市区町村の税務課に問い合わせることをお勧めします。

より詳しい固定資産税の計算は、固定資産税計算シミュレーションで行うことができます。ぜひご活用ください。