固定資産税はいつ時点の土地所有でかかる?納付時期と所有権の関係を詳しく解説
監修者情報
この記事は、不動産税務を専門とする税理士 佐藤雅彦(東京税理士会所属)が監修しています。最新の税制改正(令和6年度)に対応済みで、実務経験15年、年間200件以上の不動産税務相談に基づく正確な情報を提供しています。
固定資産税は、毎年1月1日時点で土地や建物を所有している人に課税される地方税です。この記事では、固定資産税がいつ時点の土地所有でかかるのか、納付書がいつ届くのか、支払いスケジュールはどうなっているのかについて、税理士が詳しく解説します。
課税時点
毎年1月1日午前0時時点の所有者に課税
納付書送付時期
毎年4月〜6月頃に市区町村から送付
固定資産税の課税時点:1月1日時点の所有者に課税
1月1日時点の所有者とは
固定資産税は、地方税法第343条により「毎年1月1日(賦課期日)現在において固定資産を所有する者」に課税されると定められています。
重要なポイント
1月1日午前0時の時点で登記簿上の所有者として記載されている人が納税義務者となります。1月2日以降に売却しても、その年度の固定資産税は1月1日時点の所有者が支払う必要があります。
1月1日午前0時の時点で登記簿上の所有者として記載されている人が納税義務者となります。1月2日以降に売却しても、その年度の固定資産税は1月1日時点の所有者が支払う必要があります。
具体的な例
取引時期 | 1月1日時点の所有者 | 固定資産税の納税義務者 | 備考 |
---|---|---|---|
2023年12月31日売却 | 買主 | 買主 | 2024年度分から買主が納税 |
2024年1月2日売却 | 売主 | 売主 | 2024年度分は売主が納税 |
2024年6月売却 | 売主 | 売主 | 2024年度分は売主が納税 |
固定資産税納付書はいつ届く?4期分の支払いスケジュール
納付書の送付時期
- 送付時期:毎年4月〜6月頃
- 送付者:市区町村(東京23区は都税事務所)
- 送付先:1月1日時点の所有者の住所
- 内容:年税額と4期分の納付書
住所変更をしていない場合、旧住所に送付されるため注意が必要です。
4期分の支払いスケジュール
期別 | 納期限(一般的) |
---|---|
第1期 | 4月末日 |
第2期 | 7月末日 |
第3期 | 12月末日 |
第4期 | 翌年2月末日 |
※自治体により納期限が異なる場合があります
一括納付と分割納付
一括納付
- 第1期の納期限までに年税額全額を納付
- 一括納付による割引はなし
- 手続きが簡単
分割納付(4期分)
- 年税額を4回に分けて納付
- 各期の納期限までに納付
- 資金繰りに余裕ができる
固定資産税の年間スケジュール
固定資産税の年間流れ
1月1日
課税時点(賦課期日)
4-6月
納税通知書送付
4月末
第1期納期限
7月末
第2期納期限
12月末
第3期納期限
2月末
第4期納期限
固定資産税の計算方法と税額の目安
基本的な計算式
固定資産税額 = 課税標準額 × 税率(1.4%)
※都市計画税がある場合:都市計画税額 = 課税標準額 × 税率(0.3%)
課税標準額は固定資産税評価額を基に算定
住宅用地の軽減措置
区分 | 面積要件 | 固定資産税 | 都市計画税 |
---|---|---|---|
小規模住宅用地 | 200㎡以下の部分 | 評価額の1/6 | 評価額の1/3 |
一般住宅用地 | 200㎡超の部分 | 評価額の1/3 | 評価額の2/3 |
固定資産税額の目安
土地面積 | 評価額(目安) | 年間固定資産税額 | 月額換算 |
---|---|---|---|
100㎡(住宅用地) | 2,000万円 | 約4.7万円 | 約3,900円 |
150㎡(住宅用地) | 3,000万円 | 約7.0万円 | 約5,800円 |
200㎡(住宅用地) | 4,000万円 | 約9.3万円 | 約7,800円 |
300㎡(住宅用地) | 6,000万円 | 約18.7万円 | 約1.6万円 |
※住宅用地の軽減措置適用後の概算額です。地域や個別事情により異なります。
土地売買時の固定資産税の取り扱い
売買時の固定資産税精算
不動産売買では、固定資産税を売主と買主で日割り精算するのが一般的です。ただし、これは法的義務ではなく商慣習です。
関東地方の精算方法
- 1月1日を起算日とする
- 引渡日の前日まで:売主負担
- 引渡日以降:買主負担
- 年税額を365日で日割り計算
関西地方の精算方法
- 4月1日を起算日とする
- 引渡日の前日まで:売主負担
- 引渡日以降:買主負担
- 年税額を365日で日割り計算
重要な注意点
精算金は売買代金の一部として扱われ、買主が売主に支払った精算金は売主の譲渡所得の計算に影響します。また、買主は精算金を支払っても固定資産税の納税義務者にはなりません。
精算金は売買代金の一部として扱われ、買主が売主に支払った精算金は売主の譲渡所得の計算に影響します。また、買主は精算金を支払っても固定資産税の納税義務者にはなりません。
精算計算の具体例
計算例:年税額12万円の土地を7月1日に売買した場合(関東方式)
- 売主負担期間:1月1日〜6月30日(181日間)
- 買主負担期間:7月1日〜12月31日(184日間)
- 買主が売主に支払う精算金:120,000円 × 184日 ÷ 365日 = 約60,493円
特殊なケースでの固定資産税の取り扱い
相続による所有権移転
- 被相続人死亡日が1月1日より前:相続人が納税義務者
- 被相続人死亡日が1月1日より後:被相続人(相続人が代納)
- 相続登記が未了でも1月1日時点の実質的所有者に課税
- 相続人が複数の場合は連帯納税義務
共有名義の土地
- 共有者全員が連帯納税義務を負う
- 持分割合に関係なく全額の納税義務
- 代表者を定めて納税通知書を送付
- 一人が全額納付すれば他の共有者の義務も消滅
借地権の場合
- 土地所有者:土地の固定資産税を納税
- 借地権者:建物の固定資産税を納税
- 借地権自体には固定資産税は課税されない
- 定期借地権でも同様の取り扱い
法人所有の土地
- 法人が納税義務者となる
- 法人税の損金算入が可能
- 合併・分割時は承継法人が納税義務を承継
- 解散時は清算人が納税義務を承継
固定資産税の時点に関するよくある質問
1月1日時点で登記簿上の所有者だった売主が、その年度の固定資産税全額を納税する義務があります。ただし、売買契約で日割り精算を行うのが一般的です。買主に精算金を支払ってもらっても、法的な納税義務者は売主のままです。
住所変更の届出をしていない場合、旧住所に送付されている可能性があります。まず市区町村の税務課に連絡して住所変更手続きを行い、納付書の再発行を依頼してください。納付書が届かなくても納税義務は消滅しないため、早めの対応が重要です。
被相続人の死亡日によって異なります。1月1日より前に死亡した場合は、その年度から相続人が納税義務者となります。1月1日より後に死亡した場合は、その年度は被相続人が納税義務者となり、相続人が代わりに納税します。翌年度からは相続人が納税義務者となります。
はい、土地や建物を所有している限り、毎年1月1日時点で固定資産税の納税義務が発生します。これは「永続的な税金」と呼ばれ、所有権を手放すまで続きます。ただし、災害による滅失や公共事業による収用など、特別な事情がある場合は課税が停止されます。
一般的な納期限は、第1期:4月末、第2期:7月末、第3期:12月末、第4期:翌年2月末です。ただし、自治体によって異なるため、納付書に記載された納期限を必ず確認してください。納期限を過ぎると延滞金が発生するため、期限内の納付が重要です。
固定資産税は永遠に支払う税金?
固定資産税の永続性
固定資産税は、土地や建物を所有している限り毎年継続して課税される税金です。これは「永続的な税金」と呼ばれ、以下の特徴があります:
継続課税の理由
- 土地・建物は継続的に存在する資産
- 行政サービス(道路、上下水道等)の受益
- 地方自治体の安定的な財源確保
- 資産価値の維持・向上への対価
課税が停止されるケース
- 所有権の移転(売却・贈与等)
- 災害による滅失・損壊
- 公共事業による収用
- 非課税用途への転用
長期保有時の税負担例
年間10万円の固定資産税の場合、30年間で300万円、50年間で500万円の税負担となります。不動産投資や相続対策を検討する際は、この長期的な税負担も考慮することが重要です。
年間10万円の固定資産税の場合、30年間で300万円、50年間で500万円の税負担となります。不動産投資や相続対策を検討する際は、この長期的な税負担も考慮することが重要です。
固定資産税の軽減策
住宅用地特例の活用
住宅を建築することで土地の固定資産税を大幅に軽減できます。
- 200㎡以下:評価額の1/6
- 200㎡超:評価額の1/3
新築住宅の軽減措置
新築住宅は一定期間、建物の固定資産税が軽減されます。
- 一般住宅:3年間1/2軽減
- 長期優良住宅:5年間1/2軽減
適正な評価額の確認
固定資産税評価額が適正かどうか定期的に確認することが大切です。
- 縦覧制度の活用
- 不服申立ての検討